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いわゆる「ホームスクーリング監督法」が世界各国で話題となっています。
米国や英国ではホームスクーリングが普及するにつれ、児童虐待のリスクを同時に高めているという論調が増えています。議員らが中心となり説明責任の強化を求める一方、ホームスクーリング支持者たちは、「追加的な記録(の提出)は虐待への効果的な対策にはならない」「法を遵守する家庭にとってホームスクーリングをより面倒なものにする」と反発しています。
英国では法律で「(親は)学校への定期的な通学またはその他の方法」により、子供に適切な教育を提供しなければならないと定められています。公立学校に一度も通学したことのない子供は、自動的にホームスクーリングを受けているとみなされます。
米国では1990年代初頭までに全50州でホームスクーリングが正式に合法化されましたが、州によって法律が異なります。34州ではホームスクーリングに関する規制が緩やかである一方、4州では厳しい規制を設けています。例えば、ペンシルベニア州では保護者はホームスクーリングの意思を地域の教育長に通知し、一部の学区では予防接種記録を提出することが義務付けられています。
米国では今後、さらに規制強化に向かう流れがあります。
2025年1月、ニューハンプシャー州議会は、州の税額控除や奨学金を受けているホームスクーリングプログラムに対し、犯罪歴調査への参加を求める法案を提出しました。インディアナ州でも、保護者が教育長にカリキュラム計画と進捗報告書を提出しない限り、慢性的に欠席する生徒が公立学校を退学することを禁じるという法案が提出されました。
現在は通知義務がないイリノイ州でも、議員らがホームスクールの意思表示を学区に提出することを義務付ける法案を検討しています。今年2月に提出されたホームスクール法が州議会を通過すると、提出を起こった際に不登校罪に問われる可能性があります。オクラホマ州の法案も、保護者に対しホームスクールの意思表示と、子供の教育に関わるすべての人の氏名開示を義務付けています。
ホームスクーリング監督法の支持者は、それらの義務が「児童虐待の防止につながる」と主張しています。英国では最近、サラ・シャリフさんの死亡事件などが社会的なイシューとなりました。
ホームスクールのコミュニティが児童虐待を助長しているという非難は、ここ10年ほどで大きくなっています。高名な米国の識者が「虐待を行う親は、教師が児童保護サービスに通報するリスクを負うことなく、子供を自宅に留めておくことができる」と主張したこともあります。また米国に拠点を置く責任ある家庭教育連合(Coalition for Responsible Home Education)は、2000年以降、「ホームスクール環境における虐待とネグレクト」の事例が423件あると報告しています。また、米国ポジティブケア児童協会(American SPCC)は、2022年だけで約2000人の子供が虐待またはネグレクトで死亡したと推定しています。
監督を支持する専門家たちは、児童虐待の蔓延とホームスクーリングの関係性を探ろうと試みてきましたが、その結果はあまり信ぴょう性が担保されていません。国際子ども虐待防止学会(ISPCAN)は「信頼できるデータの不足と、問題が高度に政治化されているため、結論の出ない、矛盾した研究が数多く生み出されている」と結論づけています。
またある研究では、親の教育水準、世帯収入、里親家庭での年数、民族性などの要因を考慮に入れた後、学校に通う子どもとホームスクールの子供の間には、虐待やネグレクトの発生率に違いはないという結果も公表されています。
ホームスクーリング関連規制が、より科学的なデータとホームスクーリングの発展を前提として構築されていくことが望まれます。
(EDICURIA編集部)