米アリゾナ州で、人工知能(以下、AI)によって個別最適化された授業を行うオンラインチャータースクールが開校するとして話題になっています。チャータースクールとは、米国で保護者、教員、地域団体などが、州や学区の認可を受け設置する公費運営の学校のことです。
2024年12月下旬、アリゾナ州チャータースクール委員会は、アンバウンド・アカデミー(Unbound Academy)が申請していた「AI駆動型オンラインチャータースクール」の運営を正式に認めました。アンバウンド・アカデミーは、テキサスとフロリダでアルファスクール(Alpha School)という名称で運営されているチャータースクール・ネットワークの一部であり、アリゾナ州の本スクールでは今後、4年生から8年生の生徒に対して、AIを活用した個別学習指導を1日2時間提供していく計画だとしています。なお学習には、IXLやKhan Academyなど、AIに対応した学習プラットフォームが活用される見通しです。
アンバウンド・アカデミーの申請は4対3という僅差で承認されました。理由は「人間の教師をAIが代替可能なのか」というテーマで激しい議論が行われたからだそうです。ただ今回無事に承認を得たことで、AIを中心とした教育の先例になると注目されています。
同プログラムでは「AIアルゴリズムによる学習効率を最適化」が武器のひとつに掲げられています。各生徒のニーズや学習スタイルに合わせてリアルタイムで授業を調整することで、学校の日課の大幅な短縮、そして集中的かつ個別化された学習に焦点を当てます。アンバウンドスクール側は、生徒が自らのペースで学習を進める術を提供することで、従来のクラスあるいは教育プログラムより2倍速い進捗で教えることを約束しています。効率化され余った時間を、生活スキルや個人的な興味の探求に充てられることにも関心が集まっています。
同教育モデルには、「ガイド」と呼ばれる人間の教育者も介在します。ガイドは生徒たちの社会的・感情的な発達を支援しながら、学習の進捗を監督します。そしてAIシステムと協力することで、学術的な指導を超えた包括的な教育アプローチを確保するとしています。同スクールは最初に250人の生徒を受け入れる予定で、収容能力を段階的に拡大していく計画です。人間×AIの能力をハイブリットした教育モデルが、学校教育と学生たちにどのような結果をもたらすのか。今後も引き続きウォッチしたい興味深い事例です。
なおアンバウンド・アカデミーにインスピレーションを与えたのは、テキサス州を拠点とするプログラムであるソラ・スクール(Sora Schools)だとされています。同スクールはAIツールを活用して学生の学習体験を向上させると同時に、教師が管理業務から解放されるよう支援しています。
(EDICURIA編集部)