
英国では学校から登録を抹消される生徒の数が著しく増加しているとされる。これは全国的な傾向であり、その数は5年間ではおよそ50%も増加している。
リバプールにある地区・セフトンでは、2020~2021年度にEHE(Educational Home Environment、選択的家庭教育)の生徒数が197人に達したが、現在は449人まで増加したという。
EHEとは、親が子供をフルタイムで学校に通わせる代わりに、自宅で教育を提供することを指す用語だ。英国ではホームスクールを受ける子供は必ずしも国家カリキュラムに従う必要はないが、年齢・能力・適性に応じて適切な教育を受ける必要がある。なお英国の地方自治体は家庭教育の監視および支援の役割を果たしているが、親は子供をホームスクーリングに登録する義務や規定はない。
英国の親が EHE を選択する理由はさまざまだ。なかには「子どもの精神衛生に関する懸念」「SEND の提供に対する不満」「学校制度に対する一般的な不満」などがあるある。ここで言うSENDとは「特別な教育的ニーズや障害のある子ども」を指す。
ヤング・ライブズ・センター(TCYL)が2024年末に発表したレポートによれば、ホームスクーリングを行っている家庭の約4分の3が「子どもが必要なサポートを受けられていないと感じている」ため、一般的な学校に通わせていないと推定されている。TCYLはまた、子どもが特別な教育ニーズや障害を抱えている場合、あるいは深刻な精神疾患を抱えている場合にも同様のケースが多いとしている。
6月3日にブートルで開催された児童福祉サービスに関する概観・精査委員会(OSC)のの報告では「感情に基づく登校回避」や「メンタルヘルスのニーズをサポートする学校の能力」など、生徒の学校出席に影響を与えている多くの要因が特定された。またKS4カリキュラム(14歳から16歳までの生徒が学ぶカリキュラム)や、GCSE(義務教育終了の資格)の勉強の厳しさに対し、子供が対応できないと報告する親が増えてることも明らかにされた。
委員会は一方で、親がSEN(特別教育サービス)の利用について理解が不足しているとも述べている。SENは特別な教育的ニーズを持つ子どもたちへの包括的な支援体制だ。例えば、英国の各学校にはSENCO(Special Educational Needs Coordinator)という専門家が配置され、生徒の状況を把握しながら保護者・関係者との連携を行っている。
不満の解消や親の自治体・制度に対するリテラシー向上が実現すれば、EHE児童生徒は減少するのか、あるいはEHEやホームスクーリングは変えられない大きな潮流となるか。英国の今後の変化を注視していきたい。
(EDICURIA編集部)