
発達障害を持つ子供たちは、従来の教育方法では学びにくいことがあります。しかし、プログラミング学習は子供たちにも多くのメリットをもたらす可能性があります。
発達障害は、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)の3つの大きなカテゴリーに分類されます。それぞれに特徴があり、学習障害は「書くのが苦手」「算数の概念を理解するのが難しい」など,知的な課題が見られることもあります。ASDとADHDは比較的広く認知されていますが、LDの子供も全体の約2%程度いるとされています。学校に通って読み書きを始めることで、LDであることが判明することがあります。
プログラミングは論理的な思考や問題解決能力を養うため、特にASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如・多動性障害)を持つ子供にとって、適切な学習手段となり得ます。プログラミングの特性である「順序立てて考える」「原因と結果を繋げる」といった思考法は発達障害の子供たちが得意とする部分とも一致しており、学びを楽しく効果的に進める方法となることが期待されています。
ASDの子供たちは、踏切の音に強い興味を持つことがよくあります。なぜなら、踏切が鳴ると電車が来るという、はっきりとした1対1の関係を好むからです。この特徴は、プログラミングにも似た部分があります。プログラミングは、1対1対応の論理的な思考を必要とするため、ASDの子供たちに向いていることが多いのです。
読字障害の子供たちは、コードを読む際に困難を感じるかもしれません。ただ書字障害がある子供たちは、書くのが苦手でもタイピングには問題なく対応できる場合が多いです。また算数に関してもパソコンが計算を行ってくれるため、プログラミングを学ぶことができることが多いです。
発達障害を持つ子供たちにとって重要なのは、興味を引き出し継続的に学習させることです。
言葉がまだ出ない3歳の自閉症の子供にプログラミングを学ばせるのは非常に良い方法ですが、同時に「アウトプットをすることで、素晴らしいことがある」という体験・感動を与えることが重要です。「できた!」という達成感を感じさせることに加えて、その結果が「良いことにつながった」という実感を与えることで、子供の発達に良い影響を与えることができます。このような体験は言葉の発達にもつながることがあります。
子供は基本的に多動的です。すべての子供にADHDの要素があり、それが高いか低いかという差に過ぎません。子供がさまざまなことに興味を示し集中を繰り返すのは、ごく自然なことです。そのため発達障害を持つ子供たちも、基本的には同じように接することが大切です。
発達障害のなかには、認知、姿勢、感覚に特異性を持つ子供もおり、「他の子と何か違うな」と感じた場合、そのことに気づき環境を整えることもまた非常に重要になります。
なかには「空気清浄機の音が苦手」といったような感覚的な違いがある子供もいます。苦手なものがあることに気づいたとき、それを取り除く、または改善することで、子供がリラックスし、落ち着いて過ごすことができるようになります。
発達障害を持つ子供たちにとって、周囲の理解とサポートが重要です。彼らが自分のペースで学び成長できるように、適切な方法で接していくことが教育者や保護者の大切な役割となります。
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- 保田典子
筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。