名著『発達障害と呼ばないで』を読んで感じたこと

愛着障害
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2012年に発行された岡田尊司先生の著書 『発達障害と呼ばないで』(幻冬舎新書)。この本は非常に有名で、多くの人が発達障害や愛着障害について考えるきっかけとなった一冊です。

私もこの本を読んだとき、思わず「うちの子も愛着障害なんじゃないか」と心配になりました。私自身が子どもたちが0歳の頃から仕事をしていたこともあり、「もしかして十分な愛情を注げていなかったのでは」と不安に思ったのを覚えています。

愛着障害=愛情不足ではない

この本の中で特に大切だと感じたのは、愛着障害が 「愛情不足」ではない ということ。時々、愛情不足を心配して相談に来られるお母さんがいますが、私がこれまで出会ったなかで「本当に愛情不足」のお母さんに会ったことはありません。むしろ、心配している時点で十分にお子さんを愛している証拠だと思います。

それでも親子の間で想いがすれ違い、愛着パターンがうまく築けない場合もあるのが現実です。この場合、親子の関わり方や環境を工夫することで、子どもが安心して愛情を受け取れるように整えることが大切だと思います。

愛着は生まれたときから自然に形成されるものではなく、後天的に獲得していくものです。たとえ愛着パターンが少し崩れていたとしても、これからの関わり次第で改善し、愛着を深めていくことが可能です。「愛着障害」という言葉にとらわれすぎることなく、親子の信頼関係を丁寧に築いていければ、それが一番の解決策になると感じました。

『発達障害と呼ばないで』には、愛着障害以外にも、非定型発達の子どもを伸ばすコツについても具体的でわかりやすく書かれています。愛着障害に関心がない方でも、子どもの才能や勉強を伸ばしたい方にとって有益な内容が盛りだくさんです。

親としてどう子どもに寄り添い、成長をサポートできるか――この本はそのヒントをたくさん与えてくれます。一読の価値がある一冊ですので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

  • 保田典子やすだのりこ
    高円寺こどもクリニック院長

筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。