子供の癇癪と上手く付き合うための知識と対処法

癇癪
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子供が癇癪を起こして手がつけられない、と悩むママは本当に大勢います。あまりにも程度がひどい場合は医師に相談しなければなりませんが、自然な成長過程の1つでもあるので、そっと見守ることも大切です。

小さな子供でも怒ったり泣いたりすることはよくありますが、耳が痛くなるほどの大声で叫んだり、パニック状態で泣き喚くようなら、癇癪かも知れません。子供は感情をコントロールするのが難しく、言葉でうまく気持ちを表現できないことも多いので、癇癪を起こすと考えられています。

子供の癇癪によくある種類と行動の通りです。

  • 叫ぶ、泣く、金切り声を上げる
  • 床にひっくり返って暴れる
  • 物を投げつける
  • 手足をばたつかせる
  • 足を踏み鳴らす

いきなり子供が癇癪を起こすと戸惑ってしまいますが、実は子供が癇癪を起こすまでには一定のプロセスを踏んでいることが多いようです。子供は、自分にとって不快なこと(欲求不満、疲労、空腹など)が起こると癇癪を起こします。また、気持ちを伝えるため、注目を引きたい時にも癇癪という手段を使うことがあります。

癇癪が始まる年齢帯とは

癇癪が始まる年齢は個人差がありますが、早ければ1歳ぐらいで癇癪を起こすようになります。一般的には2歳から4歳ごろが最も多いと言われています。

子供に毎日泣き喚かれてしまうとママも泣きたくなりますよね。そこでやってしまいがちな間違った対処法が「癇癪を抑えるために子供に都合の良いご褒美をあげる」というものです。

人前で癇癪を起こされてしまうと、人目が気になり、本当にいたたまれない思いをしますよね。でも、早く泣き止ませるためにオヤツやジュースをあげる、欲しいと要求しているものを買ってあげる、寝る時間なのにテレビを観せる……などはNG行為です。理由は「癇癪を起こすとご褒美がもらえる」と間違った学習をしてしまうからです。

「暴れたら言うことを聞いてくれる」「ジュースを飲みたいから大声を出そう」と暴れ方がどんどん激しくなる可能性があるので注意して下さい。

オヤツは午後3時、寝る時間は午後8時、などママ&パパが決めたルールは、たとえ癇癪を起こしても緩めないようにしましょう。繰り返すうちに子供も「泣いても思い通りにならない」と理解できるようになります。

怒鳴りつけるのは逆効果

癇癪を起こしている子供に冷静に言い聞かせるのは難しいですよね。1~2歳でまだ言葉が完全に分からない年齢だと、ママがいくら一生懸命に説得しても伝わりません。叱ることも必要ですが、パニック状態の子供を怒鳴りつけても、なぜ叱られているのか理解できません。

むしろ、癇癪を起こしている時は懸命に意思表示をしている真っ最中ですから、「僕(私)の気持ちを分かってくれない」と逆効果になります。そのため「分かってもらうためにもっと大きな声を出さなきゃ、暴れなきゃ」と癇癪が激しくなる悪循環に陥ってしまいかねません。問答無用に子供の気持ちをシャットアウトすると、親子関係にヒビが入る可能性もあります。

癇癪を起こした子供の気持ちを落ち着かせるためには、共感するのが一番です。おもちゃが欲しいと暴れている時は、「買わないって言っているでしょ!」と叱り飛ばすのではなく、「○○君(ちゃん)はこれが欲しいんだね」と一旦気持ちを受け止めます。

「こういうの好きだもんね」、「かわいいね」と子供の気持ちを理解していることを表す言葉を言い足すのも効果的です。癇癪が落ち着いてきたら、「でも今は買ってあげられないんだ。お店に入った時に今日は買わないよってママ言ったよね」などと要求を受け入れることはできないと冷静に伝えましょう。

ママにも忍耐が必要な対応ですが、子供の気持ちを受け入れた上、わがままな要求を受け入れないと示すことで、子供が「癇癪を起こしても意味がない」と理解して暴れなくなる効果を期待しましょう。

また、癇癪の原因に沿って対処しているだけでは収まらないこともあります。タイムアウト法といって、何もない静かな部屋に短時間座らせる、といった方法や、別の事に気をそらせて子供の意識を他にずらす方法も有効な場合があります。

子供の癇癪が度を越している……と感じた時は、「子育て支援センター」「児童発達支援事業所・放課後等デイサービス」「発達障害者支援センターなど、医療機関以外の専門機関に相談することも検討して下さい。

子供は伝えたいことがあって癇癪を起こしているので、無視や怒鳴りつける対応は避け、改善策を試してみて下さい。また、一人で不安を抱え込まないで、息詰まったりしたら早めにかかりつけの医師や専門機関などに相談しましょう。

  • 保田典子やすだのりこ
    高円寺こどもクリニック院長

筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。