
健診でよく受ける質問のひとつに「赤ちゃんがよく反るのですが、脳性麻痺ではないでしょうか?」というものがあります。こうした質問は初めての育児をされているお母さん方からいただくことが多いです。
結論から言うと、大多数の赤ちゃん(ほぼすべてと言ってもよいほど)は、ただ単に力が入りすぎて反っているだけです。脳性麻痺の反りとはまったく異なります。この違いを理解することで、少しでも不安が和らげばと思います。
赤ちゃんが反る理由
人間の体には力を抜いてリラックスする際にも神経が働いています。多くの人は、力を入れるときにだけ神経が活発に働いていると思いがちですが、実際には逆の動き、つまり力を抜く際にも脳から筋肉へ指令が送られています。この「リラックスしなさい」という指令によって、筋肉が適度に緩むことができるのです。
一方で、脳性麻痺のお子さんの中には、このリラックスの指令がうまく機能しない場合があります。その結果として筋肉が常に緊張状態になり、体が反ってしまうことがあります。この反りは、通常の赤ちゃんが一時的に力を入れて反る動作とは見た目や感触が全く異なります。この違いは、小児科医が診察すればすぐにわかるものです。そのため、「脳性麻痺ではないか」と心配になるお気持ちは理解できますが、まずは小児科医に相談してみることをおすすめします。専門医が診れば、多くの場合、短い時間で「心配ありませんよ」と否定してくれるはずです。
男の子に反りが多い理由
健診などで診る赤ちゃんの中には、力が余っているかのように元気に反る子がいます。特に男の子に多い傾向があり、力強さを感じさせるような元気いっぱいの動きが特徴的です。
男の子が反ることが多いのは、女の子よりも筋肉が発達しているためかもしれません。男の子は生まれつき力強い動きを見せることが多く、それが反りやすさに関係しているのではないかと考えられます。とはいえ、女の子で反りが目立つ子もいますので、性別に関係なく個々の発達を観察していくことが大切です。
赤ちゃんの成長は個性豊かで、力強い動きや反りもその一部です。親としては気になる部分が多いかもしれませんが、専門家に相談しながら、赤ちゃんの成長を温かく見守っていくことが大切です。
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- 保田典子
筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。