妊産婦死亡の原因第1位は「自殺」妊娠中&産後の心の健康を守るために

産後うつ
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「自殺は病気です」

そう聞くとても驚かれるかもしれません。ただ風邪やがんと同じように「心の病」も誰にでも起こりうるものだと私は考えています。どれだけ気をつけていても避けられない時がありますが、周りのサポートや適切な対策で予防することもできるのです。

特に、妊娠や出産は心と体に大きな負担をかけるため、「産後うつ」になることがあります。これが「お母さんのせい」だなんて、決して思わないでください。心が弱いからなるのではなく、どんなに強い心を持っている人でも、どんな職業の人でも、産後うつになる可能性があります。

これは、身体の変化やホルモンバランス、育児のプレッシャーなどが複雑に絡み合って起こるものです。だからこそ、「自分が悪い」と責める必要は全くありません。

私自身の経験

私が一番つらかったのは、第1子を出産した時でした。体調が悪かったこともあり、心が深く落ち込み、なかなか立ち直れませんでした。その頃は、どうしようもない不安や孤独感に襲われる日々でした。

保健センターに相談し、ピアカウンセリングを受けることで少しずつ楽になりましたが、「これで治った」と実感できる瞬間は正直ありませんでした。時間の経過とともに、少しずつ抜け出していたという感覚です。

今ひとつだけはっきりと言えるのは「助けを求めたことに間違いなく意味があった」ということです。どんなに救われたと感じられなくても、誰かにサインを送り続けることは大切です。

日本で妊産婦死亡の原因の第1位は「自殺」と言われています。この事実は胸が痛みます。出産は新しい命を迎える素晴らしい瞬間のはずですが、同時にそれが原因で命を失う方がいる現状を私たちはもっと知る必要があります。

もし心が重くてどうしようもない気持ちになっているなら、どうか自分を責めないでください。そして助けを求めてみてください。家族だけでなく、助産師訪問や保健センターなども利用してみてください。話すことがつらいかもしれませんし、すぐに「救われた」と感じられないかもしれません。それでも、助けを求め続けてください。

うつ病は終わりがない病気ではありません。少しずつ光は見えてきます。あなたが感じている痛みは、あなたのせいではありません。その痛みはいつか必ず和らはずです。

  • 保田典子やすだのりこ
    高円寺こどもクリニック院長

筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。