夜泣きと夜驚症の違いとは...慌てず落ち着いた対応が必要

夜驚症
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寝ている子どもが突然、泣き叫んだりパニックを起こしたりする夜驚症(やきょうしょう)。その姿を目の当たりにすると、ちょっと不安に感じることもあるかもしれませんが、これは3~6歳の子どもが発症することが多い睡眠障害の1つです。

夜泣きは3~4カ月から2歳ぐらいまでの乳児に多くみられ、浅い睡眠の途中で、覚醒したときに感じる不安や興奮をうまくコントロールできず泣き出すことです。

一方で夜驚症は3~6歳くらいの幼児が、深い睡眠に入っているときに恐怖やパニックに襲われ、自分の無意識の状態で泣き叫んだりパニックを起こすことです。突然起き上がり、歩き回るということも。5分ぐらいから長くても15分ぐらいで治まります。

夜泣きとは違い、夜驚症は脳の一部だけが起きている状態でほかは眠っているため、声をかけても反応しないか、とても鈍い反応しかみせません。そして朝、目を覚ましたあと本人は何も覚えていないことが特徴です。

子どもの脳は発達途中のため、睡眠システムも整っていません。通常は浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠が一定の時間ごとに交互に訪れ、レム睡眠から覚醒に至ります。ただ、3~6歳は睡眠と覚醒を調節している部分がまだうまく働かないため、ノンレム睡眠中であるにもかかわらず、日中感じていた不安やストレス、恐怖などが脳に興奮を与えてしまうことがあります。その場合、脳が完全に覚醒しないまま興奮状態になってしまい、泣き叫んだりパニックになったりする症状が現れるのです。

また、興奮状態を引き起こす原因は、日中のストレス、恐怖体験、過度の刺激、強い不安や緊張の4つが挙げられます。逆に、遊園地に行くなど、楽しい出来事でも引き起こされることもあります。大人にとってはささいなことと感じても子どもにとっては興奮状態を引き起こす原因になることがあります。そのような体験をしたときに「安心していいよ」「怖がらなくて大丈夫」などと伝えることが症状の改善につながることもあるようです。

夜驚症の対処法・治療法は?

多くの場合は成長とともに症状が落ち着き、特別な治療は必要ないケースがほとんどです。専門的な治療はおこなわず経過観察という場合が多いでしょう。

経過観察をする場合のポイントは、ママやパパが慌てずに落ち着いて対応することです。子どもが泣き叫んだり、パニックを起こしても無理に起こしたり、押さえつけたりせずに、動き回ることを想定し、周囲に危険なものがないかを確認して治まるまで見守ります。

また、決まった時間に布団に入り、決まった時間に寝るという規則正しい睡眠習慣や安心して寝られるように好きな絵本を読むなどの入眠儀式も改善の効果があるようです。ただ、夜驚症があまりに激しく、親子の睡眠や健康に支障をきたすようであれば、小児科や睡眠外来のある精神科に、症状をしっかり観察したうえで相談し治療法や対策がないかを聞いてみましょう。投薬治療で症状を軽くすることができる場合もあります。

夜驚症は発達段階で起こる症状なので、珍しいことではありません。成長とともに回数が減り、いずれ治まってくるので、ママやパパはおおらかに構えて見守る姿勢でいることが大切です。

  • 保田典子やすだのりこ
    高円寺こどもクリニック院長

筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。