「親の学び直し」がホームスクーリングの子どもの未来を育てる

親のリスキリングとホームスクーリング
Photo by Vitaly Gariev via unsplash.com

ホームスクーラーが多い米国では「親の学び直し」(=リスキリング)がひとつのテーマになっています。

米国の教育支援団体・ HSLDA(Homeschool Legal Defense Association) の調査によると、ホームスクーリングを行う家庭の多くが、「子どもと同じテーマを一緒に学んでいる」と答えています。例えば、子どもが歴史を学ぶときに親も一緒に本を読み、議論をする。あるいは科学実験を家庭で行うとき、親自身が手を動かし、仮説を立てる。そんな共に学ぶスタイルがホームスクーリングの主流になりつつあります。

従来、親は「教える」という立場にありました。ただホームスクーリングの現場では「共に学ぶ」ことが重要視され始めており、これは教育における大きな意識転換のターニングポイントになる可能性があります。

ホームスクーラーの子どもたちは、平均よりも高い学業成果を示すことがあるとされています。またHSLDAが2003年に発表した調査「Homeschooling Grows Up」では、ホームスクール出身の若者の74%以上が大学レベルの学習経験を持ち、地域活動やボランティアにも積極的に参加していることが示されています。研究者たちはその背景に、「学び続けることを重んじる家庭文化」があると指摘します。

教育心理学では、他者の行動を観察して学ぶことを「モデリング効果」と呼びます。親が「調べる」「考える」「わからないと言える」――そんな姿を見せることで、子どもも自然と学びへの意欲を持ちやすくなります。そして家庭が学びの場になる時、親は先生ではなく最初の学習仲間になります。

なお前出のHSLDAでは、親向けの講座やコミュニティが多数開催されています。講座分野も、教育理論、発達心理、カリキュラム設計、デジタル教育など多岐にわたります。ある実践者の母親は、「最初は教える責任にプレッシャーを感じていた。ただ自分が学ぶことで家庭の雰囲気が変わった。子どもも私も一緒に探究する仲間になった」とコメントしています。

日本でも、子どもの学びを家庭で支える動きは少しずつ広がっています。ただ「どんな学びを支えればいいのか」「どこまで関与すべきか」といった指針はまだ手探りです。そんな今こそ、米国で広がりつつある親の学び直しとリスキリングという視点は、ひとつのヒントになるかもしれません。

学びは子どもだけのものではありません。親が学び続ける姿を見せることが、何よりも強いメッセージとなるでしょう。

(EDICURIA編集部)