
米国でホームスクールを実践する家庭(以下、ホームスクーラー)では、ChatGPT や類似モデルなど生成AIを探究や学びの支援に組み込む動きが広がりつつあります。カリキュラム提供企業 ・Age of Learning の調査によれば、ホームスクーラーの教育者の約 44%が ChatGPT を利用している一方、公立学校などで教える教員の利用率は 34%にとどまっているとされます。
ホームスクーラーたちが ChatGPT をはじめとした生成AIを取り入れる背景にはいくつかの動機があります。
まずひとつは「リソース・時間の節約」です。教材作成、授業案設計、説明文・課題作成などは、親や教育者にとって時間がかかる作業です。ChatGPT はこうした補助作業を担うことができます。例えば、あるホームスクーリング支援サイトでは「ChatGPT を使って日割りスケジュールを組んだ」「複雑な概念を子ども向けに解説し直してもらった」などの利用法が提案されています。
ふたつめの動機は「個別化・即時レスポンス」です。子どもが疑問を持ったとき、AI に即座に質問できるという利点があります。AI は複数視点から解答案を出し、子どもの質問を掘り下げたり学習の展開を手助けできます。ホームスクーラーはChatGPT を“学習アシスタント”と位置づけており、一部の専門サイトでは子ども向け説明・フィードバック支援などを推奨しています。
「探究・発想支援ツール」も大きな動機です。自由探究テーマを設けたい時、あるいは視点を広げたいとき、生成AI に「こんな視点から調べると面白いテーマは?」など問いかけることで、発想のヒントを得ることができます。実際、保護者ブログでは「本のディスカッション質問を ChatGPT に出してもらった」「教材ユニット案を AI に作らせた」などの実践が報告されています。
最後の動機は「創作・表現活動の支援」です。物語・脚本・詩・台本など、表現系の活動で生成AI を「共同創作者」として扱う家庭もあります。AI に下書きを書かせ、それを子どもが編集・肉付けするというスタイルです。こうした手法は、文章表現の敷居を下げ、アイデアを広げる助けになるという声もあります。
生成AIはホームスクーラーにとって便利なツールですが、活用に際して注意すべき点も少なくありません。
子どもが AI を使った文章をそのまま提出するなど、学びが浅くなるリスク、剽窃リスクなどは想像しやすいでしょう。加えて生成AIは誤情報や創作的嘘(架空事実)を生み出す可能性があり、盲目的に使うと真実に基づかない偏った教育を実践してしまう危険性があります。AI の答えを鵜呑みにせず、他の資料と比べる視点を意識すべきです。
生成AIには依存や思考停止のリスクも存在します。「AIが答えてくれるから」ではなく、子供が問い続けるトレーニングを意図的に組み込む必要があるでしょう。また計算力・論述力・読解力など、自力で鍛える能力をおろそかにしない設計が必要です。
生成AIを有効活用すれば、「問いを深める」という学習にとって最も重要なスタンスの習得につなげることが可能となるかもしれません。実際に海外の教育ブログでは、AIは子どもの疑問に瞬時に対応し学習に発展させることができると指摘されています。例えば生成AIに「地震はどうして起こるのか」と聞けば、基礎解説に加えて類似現象にまで話題を広げてくれます。親がすぐに答えられない問いであっても、生成AIが学びを止めないようにサポートしてくれるのです。
ホームスクーリングにおけるChatGPTなど生成AIの活用事例は、今後も時間の経過とともに増えていくことでしょう。技術的な発展動向とともに、有意義なユースケースの登場に注目したいですね。
(EDICURIA編集部)