【レポート紹介】「日本におけるホームスクーラーの経験分析」

日本におけるホームスクーラーの経験分析
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文部科学省によると、2024年度の不登校児童生徒は34万人を超え過去最多となりました。行政は「COCOLOプラン2」など多様な学びの場を支援する動きを進めていますが、家庭で学ぶホームスクーリングはいまだ制度の外に置かれています。こうしたなか、長崎大学・教育開発推進機構生涯教育センターの岡田佳子准教授による最新の調査「日本におけるホームスクーラーの経験分析」が、この“制度外の学び”の実態を明らかにしました。

岡田氏は「ホームスクール&ホームエデュケーション家族会」に所属する90世帯を対象にアンケートを実施。回答者の9割以上が母親となりました。ホームスクールを開始した子どもの年齢は、未就学児(3 歳~6 歳)が16.0%、、小学1年生が32.2%であり、小学校1年生以下でホームスクールを開始した子供が回答者のうち約半数を占めました。

家庭教育を始めた理由として最も多かったのは「学校環境が合わなかった」(65.3%)で、次いで「HSC(高度に繊細な子ども)」(41.5%)、「発達障害など特性に対応できないため」(37.3%)が続きました。つまりいじめや不登校といった消極的理由よりも、子どもの気質や感覚特性と学校文化の不一致が主な要因であることが分かります。

家庭での学び方は実に多様です。最もよく使われている教材はYouTube(66.9%)で、タブレット学習やアプリ、漫画も学びの一部として活用されています。中でも目を引くのは「料理」(83.1%)や「買い物」「キャンプ」など、生活そのものを学びとして取り入れている家庭の多さです。

自由記述の分析では、「子どもの個性に合わせた学びができる」(46.7%)、「興味や関心を追求できる」(18.9%)といったポジティブな回答が目立ちました。家庭教育は、学校教育の「代わり」ではなく、「自分の子に合う学びを自ら設計する試み」として選ばれていることが浮き彫りになっています。

なお調査が明らかにした経済的な課題は無視できません。71.1%が「経済的支援がほしい」と回答し、約4割が「収入減」を経験していました。現状では公的支援も制度的保証もほとんどなく、家庭の努力に依存している実態が見えてきます。

岡田氏は「日本の教育政策の中では現在、学校においても個別最適な学びへの移行が進められようとしており、この考え方は自分の個性や特性に合った学習を望むホームスクーラーと通じるものがある」と述べています。今後もホームスクール家庭の実情や思いを知るための調査が広がることが求められています。レポートの詳細についてはこちらよりご確認ください。

(EDICURIA編集部)