不登校児童数が過去最高...家庭所得も大きな要因に

不登校と所得
Photo Steinar Engeland via unsplash.com

日本では不登校になった児童数が過去最高を更新し続けており、ここ数年では社会的な関心がより高まっている。不登校の背景には「いじめ」「学習のつまずき」などさまざまな要因が複雑に絡み合っている。また家庭の収入が子どもの不登校に大きく影響しているという実態も浮かび上がっている。

厚生労働統計協会が公表した「不登校発生に関連する家族要因の検討」というレポートによれば、世帯年収が200万円未満の家庭では不登校になる可能性がもっとも高く、逆に600万円以上の家庭ではそのリスクが大きく低下することが指摘されている。また調査対象を分析した結果、不登校を抱える家庭の割合はひとり親世帯でおよそ8人に1人、ふたり親世帯でも20人に1人だったという。

文部科学省がまとめた報告「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」でも同じような傾向がみられる。学校での授業料や教材費、給食費を補助する「就学援助」を受けている子どもたちは、そうでない子どもに比べて不登校になる可能性が約4倍高いことが指摘されている。言い換えれば「経済的に苦しい家庭環境」が、子どもたちの登校継続にとって大きな壁となっている。

児童たちの実態に触れる現場からも指摘がある。NPO法人・カタリバが行った調査「不登校に関する子供と保護者向けの実態調査」では、一人親世帯の4割近くが年収200万円未満だと回答している。家計のやりくりで精一杯の状況では、学用品や通信費の支払いが難しく、学校生活に必要な準備すらままならないことがあるという。

なお同傾向は日本に限定されない。英国の調査では、低所得世帯の子どもを対象にした無償給食制度を受けている子どもたちのうち、年間で10日以上欠席する割合は3割を超える。これは一般家庭の子どもの2倍以上にあたる。経済格差がそのまま教育格差、ひいては将来の格差につながっていく現実は先進国に共通した課題だ。

ではなぜ収入と不登校は関連性が示されるのか。背景にはいくつかの要因が想定できる。まず学用品や制服、部活動の費用、さらにはパソコンやインターネットといった学習環境の整備など、学校生活には想像以上にお金がかかる。加えて低所得世帯では保護者が複数の仕事を掛け持ちすることも多く、子どもの生活リズムのサポートが難しい場合がある。さらに、家計の不安は親子双方の心理的ストレスとなり、登校意欲に影を落とす。

なお所得と不登校の関係は因果が一方向とは限らない。つまり、子供の長期欠席が続けば保護者の就労困難化などの逆因果にもなりうる。そして保護者の就労が困難となれば、家庭の職がさらに低下し、不登校児の環境がさらに悪化するという循環が生まれる可能性が高まる。

不登校の問題は「家庭の問題」として片づけることはできない。経済的に困窮する家庭を支援することは、子どもたちが安心して学べる環境を整えることでもある。就学援助の制度をさらに柔軟に利用できるようにしたり、オンライン学習や地域の居場所づくりに公的な支援を広げることが求められている。

(EDICURIA編集部)