
AIの進化が止まりません。いまやビジネスや教育の現場で欠かせない存在となり、中長期的には「デジタル社員」として活躍する未来も見据えられています。この記事では、最新のAIトレンドとともに、AIと人がどのように役割を分担しながら“学び”を深めていけるのかを考えてみたいと思います。
AIの進化と専門化
AIといえば、ChatGPTの登場が大きな転機となりました。今では、あらゆる分野でAIエージェントが活躍しています。2025年10月に東京国際フォーラムで開催された「日経クロステックnext東京2025」では、これまであった様々なサービスに生成AIが組み込まれていることが体感できました。そして、最近のトレンドとして、専門性を持ったAIエージェントや、複数のAIが連携して働くマルチエージェントが登場してきています。これにより、AIは「単なる効率化ツール」から「思考のパートナー」へと進化しつつあります。
三菱総合研究所によると、今後のAIは「業務代行」ではなく「協働」へとシフトし、特定の領域で人とAIが補完し合う社会が到来すると予測されています。
これまでのAI活用といえば、議事録作成、請求書処理、資料の要約といった“手間のかかる作業”を肩代わりするものでした。しかし近年は、AIが人の思考を補い、共に考える存在として進化しています。法律や医療、教育といった専門領域でも、AIは人の知的活動を支えるパートナーになりつつあるのです。
教育分野で進化が期待される「個別最適化」
教育の現場ではすでに、子どもの全体傾向や個人の学習データに応じてAIが問題を提示するツールが導入されています。さらに企業研修でも、社員のスキルや目標レベルに合わせて学習計画を提案するAIが活用されています。
こうした流れは、個別最適化(Personalized Learning)を加速させるでしょう。今後は、AIが学習者一人ひとりに合わせて説明の順番や語彙、テンポを変えるような「学びのチューニング」も可能になっていくことが期待されます。
とはいえ、AIには苦手なこともあります。たとえば、表情や感情、学ぶ人の“気持ち”を読み取りながら進めるような、非言語的・情緒的な情報を踏まえた学びの設計です。また、AIは言葉に実態・実感を持って意味を理解しているわけではありません。
そのため、「一緒に笑いながら理解を深める」といった温度感のあるやりとりや、学びを深めるための実体験の提案は、まだ人間が得意とする分野です。さらに、「発見する喜び」や「自分で気づく快感」といった「感情」は、人間にとって学びの定着に影響します。AIには効率的な勉強方法や問題作成など実務的なサポートをしてもらいつつ、情緒面の観察やサポートは人が担うようにしたいものです。
三菱総研の最新レポートによると、業務DXを推進するにあたって、アメリカでは開発スキルを持った人材よりも、「調整・開発・管理・助言」 と「相互コミュニケーション」の役割を担う人材のニーズが高い伸びを示しています。これは、理論だけでなく「意味」を共有しあいながら仕事を進めることが、人間の活動において重要であることを示しているでしょう。
このように、大きくスキル面と情緒面の二つの側面を意識して、AIと協働することが現代では求められているのではないでしょうか。
これからの学びに求められる視点
AIが進化すればするほど、人が担うべき役割がより明確になります。AIは論理を整え、人は意味を与える。AIが知識を広げ、人が心を動かす。AIを“使う”のではなく、“一緒に学ぶ”という視点が、これからの時代の学びの主流となる日も近いでしょう。より充実した学びに向けて、今後のAIの進化と新しいサービスに期待が高まります。
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 - 佐藤けいこ
 
会社員として働きながら、二児の母として子育て中。大学では生活科学(生理学領域)を学び、現在は通信制大学で心理学を専攻。2025年夏に卒業予定。自身の不調や子どもの行き渋りをきっかけに、「支援と家庭のつながり」に関心を持ち、家庭での関わりと心理学の理論をつなげる実践と探究を重ねている。理論と実体験の両面から、子育てや学びについて考える記事を発信している。
