教育水準が高いシンガポールでもホームスクーリングを選択する家庭が増加

シンガポール_ホームスクーリング
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シンガポールでは、中国系の家庭を中心にホームスクーリングを選択する動きが増えているとされます。教育制度が世界的に高水準とされるシンガポールで、なぜ学校に通わせずあえて家庭で学ばせるのでしょうか。

シンガポールでホームスクーリングを実践する親たちは「教育は一時的なものではなく生涯続くもの」という認識を持っています。政府が定めるカリキュラムに従う学校教育だけでは、子供の個性や興味に十分に寄り添えないと考える家庭が少なくないのです。特に中国系の家庭では、学業成績だけでなく精神的な成熟や文化的アイデンティティの育成を重視する傾向があり、学校外での学びも柔軟に組み立てる取り組みが進められています。

シンガポールでは法律上、子供は6歳で義務教育登録を行う必要があります。家庭教育を行う場合は教育省(MOE)に申請し承認を受けなければなりません。承認後も定期的に学習成果の報告や監査が求められるなど、制度は比較的厳格です。それでも、親たちは自分たちで教材を選び、学習スケジュールを設計し、オンライン教材や国際的な学習プログラムを取り入れながら子供の特性に合わせた教育を実践しています。

そうした選択の背景には、競争の激しい学校環境への違和感もあるとされます。シンガポールでは早期から学力テストや成績評価が行われるなど、進学競争が激しい国として知られています。そのような環境に子供を置くことに慎重になる親も多く、「自分のペースで伸びる学び」を求めて家庭教育を選ぶケースが目立っています。グローバル志向の家庭では、将来の海外大学進学を見据え国際バカロレア(IB)やオンラインスクールなど、国内制度に縛られない教育スタイルを採用する例もあります。

研究者は、ホームスクーリングの実践は単なる「制度からの離脱」ではなく「自立的な教育デザイン」としての側面が強いと指摘します。例えば、料理や家事を通じて理科や算数を学ばせる実践的教育、地域のボランティア活動を通じた社会学習、オンラインを活用した海外児童との共同プロジェクトなど学びの形は多様化しています。

一方で、家庭教育は親の教育力や経済的余裕に左右されやすく、学習の質をどう確保するかが常に問われています。政府も一定の監督体制を敷いていますが、家庭教育が広がるなかで制度の枠組みをどう維持するかが課題となっています。また家庭教育を受けた子供の社会的適応力や進学時の評価など、長期的なデータもまだ十分ではありません。

まだ課題を残しつつも、教育熱心な国であるシンガポールにおいてホームスクーリングを選ぶという行為自体が一種のカウンターカルチャーとして注目されています。子供の多様性や創造性を重んじ、標準化された学校教育の外に新しい学びを模索する親たちの姿は、アジアにおける教育の未来を映す動きのひとつといえるでしょう。

(EDICURIA編集部)