時代や価値観の変遷とともに発展してきたホームスクーリングの歴史

ホームスクーリングの歴史
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ホームスクーリング(家庭教育)は、子どもが学校に通わず、家庭を拠点に学習を行う教育形態です。その起源と発展は時代や地域によって多様な背景を持っています。

近代以前、王族、貴族、裕福な家庭では、子どもたちに対して家庭教師を雇い、家庭内で教育を行うことが一般的でした。例えば、哲学者アリストテレスはアレクサンドロス大王の家庭教師でした。また発明家トーマス・エジソンも幼少期に学校になじめず、母親から家庭で教育を受けその才能を開花させたとされています。

アメリカにおけるホームスクーリングの発展

米国では19世紀から20世紀初頭にかけて、就学義務法の制定により公立学校教育が普及しました。しかし一部の親たちは学校環境や教育内容に不満を持ち、独自の教育を求める動きが生まれました。特に1980年代、税制改革により小規模なクリスチャンスクールが閉鎖されるなか、宗教的価値観を重視する家庭がホームスクーリングを選択するケースが増加しました。この時期、教育理論家ジョン・ホルト氏が既存の教育システムに異論を唱え、家庭での学びを提唱したこともホームスクーリングの普及に影響を与えたとされています。

日本では1980年代後半からホームスクーリングが徐々に認知され始めとされています。吉井春人牧師が米国発祥の「ホームスクーリング」の概念を取り入れ、実践を開始したとされています。その後、1990年代には不登校支援やオルタナティブ教育の一環として、家庭を拠点に学ぶ「ホームエデュケーション」や「ホームシューレ」といった取り組みが広がりました。2000年代以降、インターネットの普及に伴いオンライン学習やeラーニングを活用した家庭教育の形態も増加しています。

現代のホームスクーリング

現在、ホームスクーリングは多様な理由で選択されています。宗教的価値観、学校環境への不満、特別な教育ニーズ、スポーツや芸能活動との両立など、家庭ごとに異なる背景があります。米国では2016年時点で約230万人がホームスクーリングを実施しており、その数は年々増加傾向にあります。一方、日本では法的な整備や社会的認知が進行中であり、各家庭の状況やニーズに応じた柔軟な教育選択肢として注目されています。

ホームスクーリングの歴史は、社会の変化や教育に対する価値観の多様化とともに進化してきました。今後も各家庭のニーズや社会の要請に応じて、その形態や方法はさらに多様化していくと考えられます。

(EDICURIA編集部)