
先日、地元のお祭りに出かけました。賑やかな雰囲気の中で、普段あまり見かけない「重症心身障害児」と呼ばれる、ほぼ寝たきりに近い障害を持つ子どもたちの姿を見かけました。(「障害」という表記には色々意見がありますが、ここでは分かりやすく一般的に使われている字を使わせていただきます)
私はその光景を見てとても嬉しくなりました。普段はなかなか街中で目にすることがない彼らが、お祭りという場所で笑顔を浮かべながら家族と楽しんでいる姿を見て、「どんな人でも楽しめるお祭りって素晴らしいな」と心から思ったのです。
内閣府が発表した平成28年度版「障害者白書」によれば、日本には18歳未満の障害児が数多く存在します。その数は身体障害児7.8万人、知的障害児15.9万人と試算されています。なお総数に換算すると身体障害者は約393万人、知的障害者は約74万人(軽度から重度まで含む)となります。
これを日本の人口(約1億3000万人)に当てはめると、例えば知的障害者は約200人に1人という割合になります。つまり小学校に1人以上は知的障害を持つ子どもがいる計算です。
しかし、実際には養護学校や医療機関、施設で過ごす子どもも多く、日常的に見かける機会は限られています。そのため、障害を持つ子どもたちが地域の中で暮らしている実感を得ることは少ないのが現状です。
健康であることは「たまたま」
私たちが健康でいられるのは、実は「たまたま」だと私は思います。障害を持つ理由にはさまざまな要因があります。
生まれつきの病気、出産時のトラブル、大きな病気や事故など、本人のせいではなく、誰にでも起こりうることです。私たちが健康でいられるのは単に運良く大きなトラブルに遭遇しなかっただけです。
私は障害を持つ人たちが地域の中で暮らし、支え合える社会を心から願っています。彼らもまた私たちと同じ尊い命を持ち、それぞれがこの世に「役割」や「ミッション」を持って生まれてきた存在です。
お互いの存在を認識し、互いの役割を尊重しながら共に生きること。それができる社会こそが、真に豊かで温かい社会なのだと思います。
誰もが安心して生きていける社会を作るために、私たち自身ができることを考え、少しずつ行動に移していけたらと考えています。
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- 保田典子
筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。