不登校児童生徒に対するケア&支援を拡充する自治体の取り組み

不登校_ハートフルスペース
横浜市のハートフルスペースを訪問する市議団(出典:公明党ウェブサイト

山口県の教育委員会は、不登校の中学生を支援するために県内の中学校に「ステップアップルーム」(SUR)という居場所を設けている。個室などを用意する独自の取り組みによって、初年度となる2023年の利用者の半数以上が学校にふたたび通うようになったという。2025年には専属のサポート教員の配置を拡充する計画だ。

SURは学校での学習および集団生活が難しく不登校となった生徒向けに開放された場所だ。個室ブースを設け、サポート教員が教師と連携して学習の指導や家庭訪問を行う。山口県の教育委員会は、コロナ禍などを背景に県内の不登校の小中学生が増えたことを問題視。中学生の年代で不登校が特に目立ったため20223年度から同事業を開始した。同年に不登校だった中学生は2286人で過去最多だったという。そのため中学校22校にSURを設け、サポート教員を22人配置した。

なお2023年度にSURを利用した生徒379人のうち、212人(56%)がふたたび通うようになったという。生徒からは「前よりも明るくなれた」などの声が寄せられるとともに、学生同士で登校を促す雰囲気も醸成されたという。

一方、横浜市の教育委員会は、今年の夏に市内の不登校児童生徒を支援するための新拠点を設置するとしている。場所は上大岡駅直結の施設に開設する方針だ。新拠点には専門的人材を集約。オンラインなども活用しながら支援を行う計画だ。

同市教育委員会によれば、2023年度に年間30日以上欠席した不登校児童生徒は9775人で、その数は増加傾向にあるという。

横浜市では、登校はできるものの授業を受けることが困難な児童に対し、小学校は学校独自の取り組みを実施。中学校では市の「校内ハートフル事業」として別室対応を行っている。

また登校自体が難しい場合には、校外支援として市内14カ所にある「ハートフルスペース」で、カウンセラーなどの相談を受けられる体制を整える。今回、上大岡に近い4カ所のハートフルスペースの機能を、今年9月頃から駅直結の「ゆめおおおおかオフィスタワー」に集約するとともに、専門的人材を集めより充実した支援を行えるようにする。

新拠点には、教員経験者、カウンセラー、不登校児童支援コーディネーター(ソーシャルワーカー)などが配置される。対面での学習支援、進路相談、オンライン授業配信、ドリル学習、バーチャル空間を利用した情操教育などを実施する。再登校のみならず、卒業後の自立を目標とする。年間で想定する利用者数は300人だ。

(EDICURIA編集部)