
「兄弟平等に愛情を注ぐ」のは親として理想的な姿ですが、実際の育児ではなかなか難しいものです。私自身、長男、次男、末っ子の育児を通じて、その難しさを日々感じています。
親としては、3人とも平等に才能を伸ばしてほしいと願っており、そのために子ども自身が「やりたいこと」をとことんやらせてあげることが大切だと考えています。幼児教育の分野でも、多くの専門家が同じ意見を持っています。しかし多くの親が直面するのが「下の子のやりたいことが見えにくい」という問題です。
次男の「やりたいこと」が分かりにくい理由
我が家の場合も長男の好きなことは比較的分かりやすいです。電車やサッカー、実験、理科、地図などに興味を示し、親としてもその好奇心を伸ばすサポートができます。一方で次男の場合、好きなものに兄の影響が色濃く出ています。たとえば、次男も地図が好きですが「長男が好きだから興味を持っているだけではないか」と感じることがあります。
下の子は上の子を見て育ちます。そして上の子は親を見て育ちます。次男が地図に興味を持つのも、兄が熱心に取り組んでいる姿を見ているからだと考えると、次男自身が「本当に好きなこと」を見つけるのは長男より難しいと感じます。
さらに言葉の発達の順番も兄弟で異なります。上の子は大人の言葉を聞いて言葉を習得していきますが、下の子は上の子の言葉を聞いて学びます。この違いが、下の子の発達や興味がより見えにくくなる要因のひとつかもしれません。
平等ではなく、子どもそれぞれに合った対応を
よく「下の子が生まれた時は、上の子を優先的に構ってあげましょう」と言われますが、この考え方は育児全般に当てはまると感じています。次男の「伸ばしたい能力」や「本当に好きなこと」は親から見て掴みにくいこともありますが、長男をしっかりサポートし、その影響で次男が成長するという形も一つの方法だと思えるようになりました。
とはいえ、下に行けば行くほど手が回らず、「もっと関わってあげたほうがいいのでは」と悩むことも多いです。それでも上の子をしっかり見てあげることで、下の子が自然と影響を受けて成長する姿を見ると、それもまた一つの愛情の形だと感じます。
兄弟それぞれが持つ個性やペースを大切にしながら、親としてできる限りの愛情を注ぎ続けたいと改めて思う今日この頃です。
-
- 保田典子
筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。