「タブレットは不要?」ヨーロッパで広がる“ローテク教育”の波

ヨーロッパで広がるローテック教育の波
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教育現場でデジタル化が進むなか、あえて「テクノロジーを使わない学校」が増えています。タブレットやノートパソコンを教室から排除し、紙の教科書や木製教材、自然体験を重視する教育です。いわば「ローテック教育」とも呼ばれる動きで、ヨーロッパを中心に注目を集めています。

アイルランドでは、タブレットを使わない学校を選ぶ保護者が増えているといいます。モンテッソーリ教育や自然体験型の学校では、子どもたちはスクリーンを見る代わりに、そろばんや木製教材などの物理的な道具を使って学びます。教室にはタブレットや電子黒板がほとんどなく、代わりに本や実物の教材を使った学習が中心になります。こうした学校では、子どもの好奇心や自発性を重視し、遊びや体験を通じて学ぶスタイルが特徴です。

自然の中で学ぶ「フォレストスクール」も人気が高まっています。アイルランドの一部の学校では、授業の多くを屋外で行い、森や自然環境を教室として活用しています。子どもたちはタブレットで情報を検索する代わりに、自然観察や体験を通して学びます。テクノロジーは完全に排除されているわけではありませんが、必要最低限にとどめるのが特徴です。教育関係者の間では、子どもたちはすでに家庭で十分にスクリーンに触れており、学校まで同じ環境にする必要はないという考え方が広がっています。

この背景には、子どものスクリーン時間に対する懸念があります。スマートフォンやタブレットの長時間使用が、集中力の低下や睡眠不足、不安感の増加などにつながるという研究が相次いでいるからです。ヨーロッパでは、子どものデジタル環境を見直す動きが広がっており、学校でも「テクノロジーとの距離」を再考する流れが出ています。

スペインのマドリード州では、2025年から小学校でのコンピューターやタブレットの使用時間を週2時間までに制限する政策が発表されました。授業での個人端末の使用を原則禁止し、年齢に応じてスクリーン時間を厳しく管理する方針です。さらに、スクリーンを使った宿題も禁止される予定で、約50万人の児童が対象になるとされています。

北欧でも同様の動きがあります。スウェーデンでは、これまでタブレット中心の教育を進めてきましたが、その結果として子どもの読解力が低下したのではないかという指摘が出ています。政府は方針を見直し、紙の教科書を増やすための予算を大きく増やすことになりました。教育関係者の中には「スクリーン中心の教育が早すぎたのではないか」という声も出ています。

もちろん、デジタル教育そのものを否定するわけではありません。ITスキルは現代社会で不可欠であり、学校でのテクノロジー活用は今後も重要だと考えられています。ただし、「早すぎるデジタル化」に疑問を持つ教育者が増えているのも事実です。

保護者の間でも議論は分かれています。デジタル教材を歓迎する家庭がある一方で、学校でまでタブレットを使う必要があるのかという疑問も根強くあります。実際、タブレット中心の教育に対し、保護者が購入を拒否するケースも報じられています。子どもが学習中に動画サイトやSNSに気を取られてしまうという理由です。

教育のデジタル化は世界的な流れですが、その反動として「ローテック教育」が支持を集めています。自然の中で遊びながら学ぶ学校、紙の教科書を重視する学校、スクリーンを極力使わない教育。こうした選択肢が広がること自体が、教育の多様化を示しているともいえるでしょう。

かつては「未来の教育」として歓迎されたデジタル学習ですが、いま教育界ではもう一つの問いが浮上しています。子どもたちに本当に必要なのは最先端のテクノロジーなのでしょうか。それとも、もっとシンプルな学びなのでしょうか。教育の現場では、その答えを探る試行錯誤が続いています。

(EDICURIA編集部)