文科省が進める「学びの多様化学校」─不登校を受け止める新しい学校のあり方

学びの多様化学校
出典:文科省HP

近年、日本で不登校の児童生徒が急増する中で、従来の学校制度では対応しきれない学びのニーズに応えるための新しい学校形態が注目されています。文部科学省が進める制度 「学びの多様化学校」もそのうちのひとつです。不登校の児童生徒の実態に配慮し、柔軟な教育課程を実施できる学校として整備されているもので、従来の「不登校特例校」から名称が変更され全国的に設置が進められています。

「学びの多様化学校」とは何か

「学びの多様化学校」とは、文部科学大臣の指定を受けることで、学校教育法に基づく通常の枠組みから離れた特別な教育課程を編成できる学校です。通常の学校では定められた時間数やカリキュラムに沿う必要がありますが、多様化学校ではその枠にとらわれず、子ども一人ひとりのペースやニーズに合わせた柔軟な教育が可能となっています。この制度は元々「不登校特例校」としてスタートし、2023年に現在の名称へ変更されました。将来的には全国で300校以上の設置を目指すといった大きなビジョンが掲げられています。

全国的な広がり―過去最多ペースで増加中

文部科学省によると、2025年春に新たに23都道府県で23校の新設が指定され、全国で58校程度に増える見通しという報道も出ています。この増加は、これまで年間1〜2校程度の増加だった時期に比べて大きな伸びで、全国に学びの受け皿が広がっていることを示しています。

直近では2026年1月に神奈川県横浜市に「横浜きりん学園」が開校しました。文部科学省の指定を受けたこの学校は、不登校児童生徒を主な対象とし、小中一貫の教育課程を採用しています。学年や時間割に縛られず、子ども一人ひとりの状態やペースに応じた学びを重視している点が特徴です。他にも鎌倉市、尼崎市、徳島県などでも学びの多様化学校の新設や準備が進められています。

多様化学校は、小学校・中学校・小中一貫校・高校といった学校種別を問わず設置が進んでおり、設置形態も「本校型」「分校型」「分教室型」「コース指定型」などさまざまです。地域ごとに特色ある教育内容が展開されているのも特徴です。学校に通うこと自体が目的になるのではなく「どのように学ぶか」を選べる環境づくりが、各地で模索されています。

各地で進む新設・準備の動きの一例は以下の通りです。

  • 神奈川県・鎌倉市
  • 鎌倉市では、不登校児童生徒向けに学びの多様化学校を中学校として設置されました。市立由比ガ浜中学校の分校として運営されており、個々のペースに合わせた柔軟なカリキュラムや探究的な学習を取り入れる計画です。分校型としては全国でも珍しい取り組みになります。

  • 兵庫県・尼崎市
  • 兵庫県尼崎市でも、2026年4月の開校に向けた準備が進んでいます。中学生を対象とした学校として設計され、地域の不登校児童生徒への受け皿として期待されています。市では校名の募集も行われるなど、地域一体となった取り組みが始まっています。

  • 徳島県教育委員会 × 鳴門教育大学
  • 徳島県では教育委員会と鳴門教育大学が包括連携協定を締結し、大学の知見を活かした支援体制づくりに取り組んでいます。両者が連携して新たな教育課程の開発や教員養成を進めるという点で、全国的にも珍しいモデルケースとされています。

  • 北九州市でも設置計画が進行
  • 北九州市教育委員会は2027年4月開校を目指し、「学びの多様化学校」の基本計画策定に向けて市民意見の募集を進めています。教育の多様性を地域に広げる取り組みとして注目されています。

現場からの声と期待

こうした学校が設置される背景には、不登校児童生徒の増加という現実があります。文部科学省の関連資料によれば、全国の不登校児童生徒数は年々増加しており、学校に通うことが困難な子どもたちの学びを保証するための制度として、多様化学校への期待は高まっています。

保護者や教育関係者の中には、「子どものペースに合わせた教育が可能になった」「通い方の選択肢が広がる」など、制度そのものへの期待の声も聞かれます。単に不登校者だけでなく、さまざまな学びのニーズに応えうる学校モデルとして注目されています。

(EDICURIA編集部)