
ホームスクーリングに対する定義は幅広く多様です。狭義では学校に行かせず、家で教育する方法のみを意味し、広くはアンスクーリングまで含めたオルタナティブスクールに通いながら、家庭で自ら勉強することも指します。
自宅で親に教育を受けることから「在宅教育」と呼ばれたりもします。米国の場合、満5歳から17歳まで子供が学校に通わずに家だけで教育を受ける場合、あるいは学校に行っても1週間に25時間未満の授業に参加し、残りは両親の教えを受ける場合はホームスクーリングと呼びます。
最近新たに注目されているアンスクーリングは、学校教育を受けないという点ではホームスクーリングと同じです。ただアンスクーリングは、教師でも親でもない生徒自らがその日に何を学ぶかを決めて実践する教育方法という違いがあります。
米国では、両親が幼稚園から大学まですべての教育課程を自宅で教えることが1993年に合法化されました。初期の米国では宗教的な信念を理由にホームスクーリングを選択する場合が多かったと言います。多くの家庭は敬虔なキリスト教徒だったとされています。
ホームスクーリングの本質と世間に広がる偏見
ホームスクーリングに対する最大の偏見のひとつは、「学校生活に困難を経験した不適応者が選択する」というものです。あるいは、過度に優れた子供が選択するという先入観があります。ただホームスクーリングを選択するほとんどが平凡な家庭です。違いがあるとするならば、親に強い教育哲学があること、もしくは公教育に対する不安を持っている点などが挙げられます。
多くの教育専門家は「ホームスクーリングは自分の子供に最も適した教育を探す過程」だと説明します。脱落することなく子供たちはそれぞれ学習速度で勉強でき、進度も自分で決められます。時間をより柔軟に活用できることがホームスクーリングの本質のひとつとなります。ホームスクーリングはまた、1対1のパーソナライズされた授業を最も効率的に運営できるシステムでもあります。
ホームスクーリングのメリットは他にも多くあります。消極的な子、好奇心が多くて質問が多い子たちは自分の知的好奇心をいかんなく発散できるでしょう。学校にいると、そのような子どもたちは授業の雰囲気をおかしくすると烙印を押されがちです。
ホームスクーリングのデメリットの把握と親の心の準備
多くのメリットを持つ反面、ホームスクーリングにはデメリットもあります。仮に英才教育システムであるという幻想に捉われてしまうと、学校に戻ることもできず、オルタナティブスクールを転々とすることもありえます。海外では実際にそのような事例も珍しくないとされています。
慎重に選択をせず状況に流されて始めてしまうと、子供も親も不安に悩まされることになます。ホームスクーリングが次善策ではなく最善策になるように、周到に用意・実践すべきだとアドバイスする教育専門家も少なくありません。
ホームスクーリングを始めた親たちは「自分が子供を教える資格があるのか」と疑問を抱くことも多いです。ただそこで重要となるのは「子供と一緒に学ぶ姿勢」です。
仮にホームスクーリングが失敗したと感じた時はどうすべきか。教育専門家たちの共通した意見はシンプルです。失敗を認めて謝まった後に、再び最善の方法を探すというものです。
ホームスクーリングにおいては、勉強を単なる知識に限定しないことも重要です。学びに対して親の態度と人間性が子供たちにより大きな影響を及ぼします。他のホームスクーリング家庭との比較も禁物だと言われています。意味がないばかりか、ホームスクーリングの意義に反するからです。すべての子供たちが年齢帯に合わせた学習範囲や順序で教育を受けなければならないという強迫観念も捨てる必要があります。
年齢と学習能力は完全に別物であり、子供が知りたがる時に学んで初めて効果がある――。そんな確固とした視点を投げ出さずに持ち続けることが重要となるでしょう。
(EDICURIA編集部)