
子どもは本当に「言うことを聞かない生き物」だと思いませんか?せっかく失敗しないようにアドバイスして「あげてる」のに、まるで聞く耳を持たず同じ失敗を繰り返す…。
例えばコップをひっくり返してこぼしたり、勢いよく走って転んで痛い思いをしたり、おもちゃがうまく動かなくてイライラしたり。「どうして私がわざわざ注意しているのに、それを無視してこんなことになるのだろう」とつい腹を立ててしまいます。
でも、ふと思いました。子どもたちが失敗を繰り返す姿を見ていると、なんだか自分自身を見ているような気がすると。冷静に考えてみると、自分も同じ失敗を繰り返ことが多々あります。
言葉よりも「体験」こそが学びの本質
子どもを観察しているとあることに気づきます。それは、彼らが「失敗から学ぶ力」をしっかり持っているということです。もちろん、一度の失敗で完璧に学ぶわけではありません。でも少しずつ学び取っているのです。
一方で、親が何かを「言って聞かせる」だけでは、子どもにとってそれが自分ごととして理解されることは少ないように感じます。子どもにとって本当に響くのは、自分で経験したことや、親が失敗する姿を見たりすることです。つまり、私たち親が「実例」を通して教えることが子どもにとっての学びになるのです。
もうひとつ気づきがありました。それは、「何度言っても聞かない子供」と「何度も子どもに言ってきかせようとしている自分自身」には同じくらい問題があるということです。「いい加減、言って聞かせるのはやめよう」と思いつつも、やっぱり同じことを繰り返してしまう…。これって、子どもが失敗を繰り返すのと同じ構造ではないでしょうか。
最近では、子どもに「こうしなさい」と言う前に、自分ができる範囲で見守る努力をしています。もちろん、危ないことには口を挟む必要がありますが、日常の小さな失敗については、あえて失敗させることも選択肢に入れることにしました。そして、私自身も「失敗する親」の姿を見せることで、「失敗って悪いことじゃないんだ」と子どもが感じてくれることを期待しています。
子育ては、親自身が成長するための旅でもあります。子どもたちが失敗しながら学ぶように、私も「言って聞かせる」から卒業し、もっと広い視点で子どもを見守る親になりたいと思います。子どもたちに言いたいことがあふれる日々。でも、そのたびに「本当に今、これを言うべきか?」と問いかけることを忘れないようにしたいものです。
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- 保田典子
筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。