子どもの癖に悩んだら「なんで?」の視点を変えてみよう。

今日は健診などでよく質問がある「子供の癖」についてのお話です。特に小さいお子さんの指しゃぶりに関するご相談について考えてみます。

小児科で健診をしていると、0歳児のママさんたちからよく「指しゃぶり」についての相談をいただきます。0歳の赤ちゃんは健診の機会が多いこともあり、癖について気になる方が多いのだと思います。赤ちゃんが指をしゃぶっている様子を見ていると、私は「一生懸命やっているな」と感じることが多いです。単なる癖ではなく、赤ちゃんにとって大切な体験の一部である場合がほとんどなのです。

赤ちゃんの指しゃぶりに込められた意味

生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の体をまだ完全に理解していません。体を動かすことはできますが思い通りに操作するのは難しく、時に思いもよらない動きをしてしまいます。指しゃぶりは、そんな赤ちゃんが自分の体と向き合い存在を確かめるための行動のひとつなのです。

例えば、赤ちゃん特有の動きとして知られる「モロー反射」も体が外界に反応している証拠です。同じように、赤ちゃんは指しゃぶりを通じて自分の手の存在を認識し、安心感を得たり、新しい感覚を体験しているのです。

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癖について悩むとき、親として「なぜこの子は〇〇をしているんだろう」と考えることが多いですよね。その気持ちが「どうしてやめてくれないのか」といった苛立ちや心配に変わる前に、少し視点を変えてみてほしいです。

行動の裏にはどんな理由があるのだろうか?そう赤ちゃんやお子さんの視点に立って考えてみると、新しい発見があるかもしれません。

私たち大人にも何かしらの癖があります。癖が生まれる背景には、何らかの理由やきっかけがあることが多いです。赤ちゃんや子どもも同じで、彼らなりに理由があって行動しています。そしてその行動を通じて新しいことを学び、発見しているのです。

困った癖が発達の芽になる

赤ちゃんや子どもの「困った癖」は、親にとって心配の種です。しかし、困った癖の多くは、新しい発達の芽を育てるためのプロセスの一部です。指しゃぶりひとつをとっても、赤ちゃんは自分の体や周囲の環境と対話しながら日々成長しています。

指しゃぶりが次第におもちゃを握る動きにつながり、その後は物を持ち替えたり、さらに高度な動作に進化していきます。癖のように見える行動を通じて、少しずつ世界を広げていくのです。

赤ちゃんや子どもの癖を見て「困った」と感じたら、その裏に隠された理由を想像してみてください。その行動が発達のステップにつながっていると考えると、親として少し心が軽くなるかもしれません。癖から新しい発見が生まれ、そこからさらに新しい発達の芽が育つ──そんな視点で子どもたちを見守ってください。

  • 保田典子やすだのりこ
    高円寺こどもクリニック院長

筑波大学医学専門学群卒業。小児科医として国立病院などで診療にあたり、小児循環器を専門に経験を積む。その後、発達障害児を多数担当するようになったことで「子どもの心相談医」の資格を得る。2021年4月、高円寺駅そばに高円寺こどもクリニック開業。