
日本や海外の教育現場では、従来の画一的な学校教育の課題が浮き彫りとなっており、特に不登校や学習に困難を抱える子どもたちの可能性を拓く「オルタナティブ教育」に注目が集まっている。フリースクールやホームスクーリング、オンライン学習プラットフォームなど多様な学習形態が少しずつ増えており、子ども一人ひとりの興味やペースに合わせた学びを実践する機会も増えてきた。
例えば、フリースクールは学校のテストや成績だけでは測れない「主体性」「創造力」「社会性」といった能力を育む場として注目されている。海外ではオルタナティブ教育を受けた生徒が、自分の強みや興味に応じてキャリアを選択しやすくなるという傾向も確認され始めている。
一方で、個人の能力向上の最適化を支える学習技術として近年注目されているのが「エージェント型AI」だ。従来の教育用アプリや学習管理システムとは異なり、ユーザーの学習状況や目標を理解し、自律的に学習計画を立てたり、学習の進め方を提案したりするAIを指す。その大きなメリットのひとつは、単なる知識の提供だけでなく、学習者の行動パターンや理解度に応じて最適な課題を提示することができる点だ。
エージェント型AIをオルタナティブ教育と組み合わせることで、子供たちの学びの可能性はさらに広がるはずだ。フリースクールに通う生徒がAIと連携することで、自分のペースで学習を進めながら、理解度に応じた個別課題のフィードバックを受けることができる。エージェント型AIは学習成果や課題の傾向をデータとして蓄積できるという利点も持つ。そのため、教師や保護者は生徒の成長をより正確に把握できるようになる。
なお遠隔地に住む生徒や通学が難しい生徒たちが抱える「学習機会の格差」も、AIエージェントを活用することで縮小できる可能性がある。またAIは学習の進捗だけでなく、生徒の心理的な状態やモチベーションをモニタリングできるため、励ましや心理的なサポートにも有用だ。
実際に国内外ではエージェント型AIを活用した教育の試みが始まっている。Alpha Schoolでは、AIチューターが生徒一人ひとりに合わせた個別学習を提供。進捗に応じて教材や課題を調整する。また岐阜県飛騨市の古川中学校では、AIエージェント「ぐりん」を導入。個々の生徒の興味や関心に基づいた探究学習を支援する。生徒はタブレットを通じて「ぐりん」と対話し、進路や日常の疑問について相談することができる。
日本では、少子化や教育現場の多様化に伴い、オルタナティブ教育とAIの融合に関心が高まっている。学習塾やオンライン教育サービスにおいて、生徒一人ひとりに最適な学習プランをAIが作成し、定期的な振り返りや改善案を提示するサービスが登場している。またフリースクールや家庭学習を支援する形で、AIが個別学習の進捗管理や教材選定をサポートするケースも増えている。
AIに過度に依存すると、人間同士のコミュニケーションや社会性の育成が不十分になるというリスクを指摘する声が一部にある。また学習データの取り扱いやプライバシー保護も重要な課題だ。ただし、それら課題をしっかりとケアできれば、AIは子供や保護者にとって強力な教育ツールになりうるだろう。
(EDICURIA編集部)