
モンテッソーリ教育やシュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)といった「オルタナティブ教育」は日本でも耳にする機会が増えてきましたが、「ユニークだけど学力面は大丈夫?」「社会性は育つの?」などの疑問が根強く残っています。
2024年に発表されたとある研究論文では、これまでの実証研究を整理し、オルタナティブ教育が子どもの認知発達や社会情緒的な成長にどう影響するか改めて検証しています。
同論文はまず、学力や認知的なスキルに関しては「悪くないどころか、むしろ良い場合もある」という結果が多く見られたとしています。特にモンテッソーリ教育は、子どもが自分で学びを組み立てていくプロセスを大切にしており、実行機能(計画性、集中力、柔軟な思考など)や創造性のテストで高い成果が出やすいとしています。
なお日本の学校はカリキュラムが全国一律で、到達度もテストでしっかり確認されます。そのため「オルタナティブ=遊びっぽい学び」という誤解が生まれやすいのですが、論文を見る限りその心配は薄れそうです。むしろ「子どもの主体性を尊重する学びが、結果的に学力にもつながる可能性」が示唆されています。
一方で、オルタナティブ教育の“看板”ともいえる社会情緒面の育ちについては、まだ研究の蓄積が十分ではありません。シュタイナー教育は芸術活動や共同作業を通じて共感性や協働スキルを磨いている、あるいはモンテッソーリで異年齢集団の学びが社会的成熟を促すといった報告はありますが、評価方法がバラバラで比較可能なデータは少ないのが現状です。
日本の教育と比べるととても興味深いです。日本の学校は「集団の中で空気を読む」「一斉に同じことをする」ことを重視する文化が強いため、社会性は育ちやすい半面、個性や自主性とのバランスが課題になりがちです。オルタナティブ教育はその逆で、「自分のやりたいこと」に重きを置くため、協調性の評価や長期的なウェルビーイングの追跡がまだ手薄となっています。
論文の結論は「オルタナティブ教育は少なくとも従来教育より劣らず、学力や認知面ではむしろプラスの効果が期待できる。ただし社会情緒面のエビデンスはもっと必要」というものです。
「知識や技能はしっかり育つが、自己決定や創造性が伸びにくい」と言われる日本の教育の現状とは、ちょうど補完関係にありそうです。
もし両者の良いところを取り入れることができれば、バランスの取れた新しい教育モデルが生まれるかもしれません。例えば、公立学校の堅実な基礎学習にオルタナティブ教育的な探究や表現の時間を組み合わせるといったハイブリッド型です。いずれにせよ、さまざまなオルタナティブ教育の選択肢が生まれる昨今、その特徴や長所・短所をしっかりと理解することが重要となるはずです。
(EDICURIA編集部)