米国ではコロナ禍後もホームスクーリングが増加中

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近年、米国ではホームスクーリング、あるいはDIY教育と呼ばれる家族主導の学びが着実に広がっています。その背景には、従来の公立学校教育に対する不満があります。画一的な制度運営や政治的な影響、そして十分とは言えない学習成果に対して、疑問を持つ家庭が増えてきました。

この流れを大きく加速させたのが、新型コロナウイルスによるパンデミックでした。長期間の学校閉鎖や混乱した遠隔授業を経験したことで、多くの家庭が「自分たちで子どもを教える」という選択肢を現実的なものとして捉えるようになりました。公衆衛生上の制限が解除されれば、こうした動きは収束するのではないかとも考えられていましたが、実際にはそうなりませんでした。

パンデミック後もホームスクーリングへの関心は衰えることなく、むしろ拡大を続けています。

ジョンズ・ホプキンス大学教育学部の「ホームスクール・ハブ」によると、2024〜2025年度の学年度において、米国全体のホームスクーリング人口は平均5.4%の割合で増加しました。これは、パンデミック以前の成長率と比べて約3倍にあたります。また、データが公表されている州の3分の1以上で、ホームスクーリングの人数が過去最高を記録しており、パンデミック中に学校が閉鎖されていた時期の水準を上回っています。

公衆衛生対策が解除された直後、一時的にホームスクーリングの人数が減少した時期もありました。多くの家庭が従来の学校生活に戻ったためです。しかし、その動きは短期間にとどまりました。2023〜2024年度から再び増加に転じ、翌年度も成長が続いています。22州のデータを見ると、ホームスクーリング人口が減少したと報告されたのは一部の州に限られ、多くの州では1%から20%以上の増加が確認されています。

さらに、実際のホームスクーリング人口は、統計上の数字よりも多い可能性が指摘されています。登録制度がある州でも、すべての家庭が届け出をしているとは限らず、教育貯蓄口座(ESA)を利用して学習費用を賄っている家庭が、統計上はホームスクーラーとしてカウントされていない場合もあるからです。そのため、現在公表されている数字は「最低限の数」と考える必要があるとされています。

最新の推計では、米国全体でホームスクーリングを受けている子どもは全体の約6%に達しています。これは、パンデミック前の約3%から倍増した計算になります。かつては一部の家庭による特別な選択肢と見なされていたホームスクーリングが、今では多くの家庭にとって現実的な学びの形として受け入れられつつあります。

こうした変化は、ホームスクーリングだけに限られたものではありません。近年、米国では公立学校から離れ、私立学校やチャータースクール、家庭教育といった非公立の教育形態を選ぶ家庭が増えています。マサチューセッツ州では学齢人口が減少する中、公立学校の在籍者数が大きく減る一方で、ホームスクーリングは大幅に増加しました。

この背景には、公立学校教育に対する保護者の不満があります。教育が「良い方向に進んでいる」と感じている保護者の割合は年々低下しており、教育の質や内容、学校運営のあり方に対する不信感が高まっています。特にパンデミック期間中に経験した学校閉鎖の判断や遠隔授業の質に失望した家庭は少なくありませんでした。

また、公立学校では一律のカリキュラムをめぐる対立が起こりやすく、家庭ごとの価値観や子どもの特性に十分対応できないという課題も指摘されています。こうした状況の中で、より柔軟に学びを設計できるホームスクーリングが選ばれるようになっています。

ホームスクーリングは、もはや一時的な流行や非常時の代替手段ではなくなり始めています。家庭が主体となり学びの形を選ぶという考え方そのものが、教育のあり方として定着しつつあるのかもしれません。

(EDICURIA編集部)