熱中VSコントロール 親子で育てる「自己調整力」

子供の熱中とコントロール
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子どもがゲームや遊びに夢中になって、約束の時間を守れない。でも、とても集中していて楽しそう——。

「約束だからすぐやめさせた方がいいのか」「もう少しやらせた方がいいのか」。親として迷うことは少なくありません。

「夢中になること」は学びの出発点

心理学では、子どもが何かに没頭しているとき、内発的動機づけ(自分の内側から湧き上がる「やりたい」という気持ち)が強く働いていると考えられます。「やってみたい」「もっと知りたい」という好奇心や、「できた!」という達成感が、その集中力を支えています。こうした感情の積み重ねが、自主的な行動や学びの意欲を育てるのです。

一方で、夢中になりすぎると寝る時間を過ぎてしまったり、宿題を後回しにしたり。大人から見ると「困った行動」に見えてしまうこともあります。

「なぜ困るのか」を親が考える

そんなとき大切なのは、「なぜ困るのか」を親自身が整理することです。

  • 健康への影響が心配だから?
  • 生活リズムが崩れるから?
  • 約束を守れないことが気になるから?
  • 親の予定が狂うから?

この問いを通して、「自分は何を大切にしたいのか」が明確になります。多くの親が本質的に求めているのは、「自分でコントロールできる力を身につけてほしい」ということでしょう。

頭に入れておきたいのは、自己制御(セルフコントロール)の力は、発達的に少しずつ育っていく、ということ。脳科学的にも、感情や衝動を抑える前頭前野の働きは思春期で発達のピークをむかえ、20代半ばまで発達するとされています。つまり、子どもが「わかっていてもできない」はある意味自然な状態ともいえます。自分でコントロールができるようになるプロセスは「時間をかけて育てる」意識を持ちましょう。それが、「そっか、時間がかかるものなのね」と、親の心の余裕を作ってくれるはずです。

成長のステップを一緒に描く

もし「約束を守る力を育てる」ことを親が重要に思っているなら、子どもと一緒に具体的で予測可能なルールや儀式を作ることが有効です。親が一方的に決めるのではなく、子どもが自分で考えたルールを取り入れることで、主体性と責任感が生まれることが期待できます。

たとえば次のような工夫があります

  • 目的を共有する
  • 「9時に寝るのは、〇〇が元気でいられるようにするためなんだ」など、ルールの意味を一緒に確認する。

  • カウントダウンの儀式を決める
  • 3回声をかけたら終了、などルールを共有しておく。 ①約束の時間になったら「あとどこまでやりたいか」を話す。 ②申告内容を尊重して待つ。 ③終了時に「明日も楽しめるように今日はおしまい」と声をかける。

こうしたプロセスをパターン化して繰り返すことで、「我慢」ではなく「理解」して、今やっていることを離れられる場面が増えていくでしょう。

「衝動を抑えられない」は自然なこと

子どもが夢中になっているとき、約束を無視しているわけではありません。脳が報酬刺激(楽しさ・快感)に集中しているため、制御のシステムが一時的に働きにくくなっているだけです。これは自己調整力(self-regulation)が発達する過程で通る段階です。

ある意味自分ではどうしようもないこと。だからこそ、叱るよりも対話を通して、親子にとって望ましいルールや儀式を作りたいですね。

また、子どもが夢中になる背景には、ストレス発散や安心を求める心理も隠れている場合があります。単に「やめさせる」よりも、子どもの様子次第では「今はどんな気持ち?」「なんだかつらそうにみえるよ」と問いかけてみることで、その場面で必要な、柔軟な対応が見えてくるかもしれません。少しの時間、親子で一緒に楽しんでみるだけで、落ち着くこともあるかもしれません。 毎回「同じ対応をしなくては!」と親がプレッシャーを感じなくても良いのです。柔軟性のある対応の「幅」も、会話の中から見つけていきましょう。

夢中になる力は、子どもの学びを推進するエンジンです。一方で、コントロールする力はそのエンジンを安全に動かすブレーキです。どちらも欠かせません。

大切なのは、親が一方的にブレーキをかけるのではなく、親子で「いつ・どう止めるか」を対話しながら調整していくこと。その繰り返しが、自己調整力の発達を支え、子どもが自分の行動を選び取る力を育てます。

  • 佐藤けいこ
    EDICURIA編集部

会社員として働きながら、二児の母として子育て中。大学では生活科学(生理学領域)を学び、現在は通信制大学で心理学を専攻。2025年夏に卒業予定。自身の不調や子どもの行き渋りをきっかけに、「支援と家庭のつながり」に関心を持ち、家庭での関わりと心理学の理論をつなげる実践と探究を重ねている。理論と実体験の両面から、子育てや学びについて考える記事を発信している。