日本の自治体のフリースクール支援の現状と課題

日本の自治体とフリースクール支援
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日本の自治体では近年、フリースクールに関する支援が少しずつ広がり、地域によっては学校以外の学びを現実的に選択しやすい環境が整いつつあります。背景には、不登校児童生徒の増加が続くなかで「一律に学校へ戻す」のではなく、子どもの状況に応じた多様な学びを認めるという考え方が広がってきたことがあります。

こうした変化を受けて、自治体ごとにさまざまな支援策が生まれており、利用者への経済的補助、フリースクール運営団体への助成、連携・認証制度の整備など、多面的な取り組みが進んでいます。

東京都では「フリースクール等利用者支援事業」が実施されており、不登校の小中学生を対象に、月額最大2万円までの利用料を補助しています。これは都道府県レベルの支援としては全国でも比較的手厚いもので、さらに区によっては上乗せの助成制度を設けている地域もあります。用者負担を直接軽減する仕組みであるため、都市部でフリースクールを利用する家庭にとっては大きな後押しとなっています。なお東京都では、フリースクールを営む事業者を支援する「東京都フリースクール等支援事業」も展開しています。

茨城県では、利用者への補助だけでなく、フリースクール運営団体そのものに対する支援も行っています。「フリースクール連携推進事業」(茨城県教育委員会)では、運営費として年間上限100万円の補助を設け、さらに通所する児童生徒の保護者に対しても授業料等の補助(月額1万5000円)が支給されます。運営団体への助成を行う自治体は全国的にはまだ多くありませんが、こうした制度は地域の安定的な学びの場を確保する上で重要な役割を果たしています。

静岡県でも民間の学びの場を支援する制度が整えられています。「民間フリースクール運営費補助」(静岡県教育委員会)では、対象施設が県との協議会に参加し、在籍校との連携を行うことなどを条件に、運営費の半額(上限100万円)が補助されます。自治体が一定の基準を設けつつ民間施設を公的支援の対象に位置づけている点で、制度的に一歩進んだ取り組みといえます。

さらに、鳥取県は十年以上前からフリースクール利用者への補助を行ってきた自治体として知られています。「鳥取市フリースクール利用料助成事業」では、授業料や交通費も含めて支援が行われ、全国でも先進的な地域のひとつです。長期的に制度を運用してきたことから、現場との連携や家庭のニーズへの理解も深く、制度が安定している点が特徴です。

一方で、自治体の支援内容には大きなばらつきがあります。助成制度が充実している地域もあれば、まったく補助が存在しない地域もあります。補助があっても、所得制限が設けられていたり、自治体が認定したフリースクールのみ対象だったり、利用回数や通所日数に条件がある場合もあります。住民票所在地によって制度が利用できるかどうかが決まるため、家庭の事情によっては制度の恩恵を受けにくいケースもあります。これは「自治体裁量による格差」として以前から指摘されている課題です。

とはいえ、国が不登校支援と多様な学びの保障を政策として進めていることも追い風となり、自治体がフリースクールを「地域の教育資源」として位置づけようとする動きは確実に広がっています。利用料補助や運営費補助、連携体制の整備や認証制度づくりなど、地域内の学びの選択肢を支えるための取り組みは増加傾向にあります。学校だけでなく、家庭やフリースクール、地域の居場所など、子どもが安心して学べる環境を複数持つことを前提とした支援が少しずつ制度化されつつあるのです。

こうした状況を踏まえると、学校以外の学びを活用したいと考える家庭にとっては、まず居住自治体(都道府県や各市)がどのような制度を持っているかを確認することが重要になります。制度の有無や内容、条件は地域によって大きく異なりますが、それぞれの自治体の公式サイトや教育委員会の情報を調べることで利用できる支援を把握できます。日本の教育は今、多様性を受け入れながらゆっくりと変わりつつあり、自治体によるフリースクール支援の拡充はその象徴のひとつと言えるでしょう。

(EDICURIA編集部)